資産運用コラム

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投資物件に「小規模宅地等の特例」を使うと節税効果がさらにアップする話

投資物件にも使える小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」について、その適用条件や計算方法などを解説します。

小規模宅地等の特例とは

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人(亡くなられた人)が生前に使用していた、事業用あるいは居住用の土地を相続する場合、その土地部分の相続税評価額を一定の割合まで減額できる特例です。
相続税の節税で、非常に有利になる特例になります。
しかも「小規模宅地等の特例」は、不動産の貸付事業に使用していた土地も対象ですので、投資物件にも使うことができます。

「貸付事業用宅地等」であれば投資物件もOK

小規模宅地等の特例が使える投資物件とは、小規模宅地等の特例のうち、「貸付事業用宅地等」に該当するものです。
「貸付事業用宅地等」に該当すれば、200平方メートルを上限に、その相続税評価額を50%も減額することができます。

投資物件が「貸付事業用宅地等」に該当する条件とは

投資物件が小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」に該当するには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

  • その不動産賃貸業を親族が引き継ぎ、相続税の申告期限(※)までその事業を営むこと
  • 相続した親族が、その土地を相続税の申告期限(※)まで保有すること

(※) 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月

たとえば、父親が生前に経営していた賃貸マンションを長男が相続した場合、長男は相続税の申告期限までその賃貸マンションを売却せずに保有し、さらにマンション賃貸業を引き続き行うことが必要になります。

貴重な相続発生「後」の対策

条件を見てお気づきかもしれませんが、小規模宅地等の特例は、相続発生「後」の行動で節税ができる、数少ない相続税対策です。
一方でその条件が、事業を引き続き行うとか、保有し続けるといった、後から知ってしまうと取り返しのつかない内容であるため、非常に怖いものでもあります。
適用できれば節税効果が大きくアップする反面、逃すと非常にもったいない特例なのです。

投資物件はアパート以外もOK

「貸付事業用宅地等」に該当する投資物件は、賃貸アパート以外でもOKです。
たとえば駐車場、自転車の駐輪場、貸倉庫などの貸付け事業も該当します。

事業的規模でなくても使える

不動産賃貸業は、事業的規模(一般的な目安は、おおむね5棟または10室以上の貸付け)に該当すると、所得税の計算において有利な税制を受けられます。
これに対して小規模宅地等の特例では、事業的規模であってもなくても、減額割合などの条件は変わりません。
ただし、後述する「3年以内貸付宅地等」に該当する土地をもつ場合、事業的規模のオーナーの方が有利な扱いを受けます。

小規模宅地等の特例はいつ使うの?

小規模宅地等の特例はいつ使うの?

小規模宅地等の特例を使えば、200平方メートルを上限に、その相続税評価額を50%減額することができます。
この50%の減額は、相続税を計算するどのタイミングで行われるのでしょうか。

投資物件の相続税評価額の計算方法

投資物件の相続税評価額の計算は、次の3つの手順に分けることができます。

  • 手順1 不動産の相続税評価額を計算する
  • 手順2 貸家・貸家建付地の減額を行う
  • 手順3 小規模宅地等の特例で50%の減額を行う

小規模宅地等の特例を使うのは、計算の最後です。
手順1、手順2だけでも、相続税評価額はかなり低くなるのですが、手順3の小規模宅地等の特例を使うことで、節税効果をさらにアップさせることができます。相続財産としてカウントされるのは、手順3まで終えた金額になります。
もしかしたら小規模宅地等の特例を使うことによって、相続財産の価格が基礎控除額を下回る(=相続税が0円)ということもあるかも知れません。
それでは、それぞれの手順で、相続税評価額がどのくらい低くなるか目安を見ていきましょう。

不動産の相続税評価額(手順1)

不動産は、家屋と土地に分けて相続税評価額を計算します。
家屋は「固定資産税評価額×1.0」で、土地は国税庁の路線価方式(路線価がなければ倍率方式)を使って計算します。
いずれも取引価格より2割から3割ほど低くなることが一般的です。

貸家・貸家建付地の場合(手順2)

家屋を人に賃貸している投資物件(賃貸アパート等)の場合、その家屋は「貸家」、貸家が建てられた土地は「貸家建付地」として、不動産の相続税評価額から、一定の方法で計算された金額を減額します。
いくら減額できるかは変動要素が多いため、アバウトな計算となりますが、もし仮に貸家の賃貸割合が100%(満室)だとすると、相続税評価額は、家屋で3割、土地で1割ほどから3割弱ほど安くなる計算になります。

投資物件に小規模宅地等の特例を使った場合の計算例(手順3)

小規模宅地等の特例は手順1、2を終えた相続税評価額のうち、土地のみを50%減額します。
減額割合だけみると、これまでの計算の中で最大といえる優遇措置です。

例:投資物件の土地(相続税評価額6,000万円、面積200平方メートル)

【計算式】6,000万円×50%=3,000万円
【相続税評価額】6,000万円-3,000万円=3,000万円
200平方メートルを超える時の計算例

「貸付事業用宅地等」の上限面積は200平方メートルです。
この面積を超えると、超えた部分は50%減額の対象にはなりません。
200平方メートル以下の部分だけ、50%の減額を行います。

例:投資物件の土地(相続税評価額6,000万円、面積300平方メートル)

【計算式】6,000万円×200/300平方メートル×50%=2,000万円
【相続税評価額】6,000万円-2,000万円=4,000万円

直前の節税対策にストップ!「3年以内貸付宅地等」とは

平成30年税制改正によって、「小規模宅地等の特例」の「貸付事業用宅地等」から、「3年以内貸付宅地等」を除外するというルールが誕生しました。平成30年(2018年)4月から適用が開始されています。

「3年以内貸付宅地等」とは

相続開始前3年以内に、新たに貸付け事業を始めた土地のことです。
該当すれば「小規模宅地等の特例」の適用はできません。
つまり、亡くなる直前に購入した投資物件では、小規模宅地等の特例は受けられないということです。

「3年以内貸付宅地等」に該当しないために

平成30年(2018年)4月1日以降に購入する投資物件はすべて、相続まで3年という期間を経なければ、小規模宅地等の特例は使えません。未来のことは誰にもわかりませんので、計画的な購入を心掛けるしかないと言えます。
ただし、相続開始の日まで3年を超えて事業的規模で不動産賃貸業を営んでいる方であれば「3年以内貸付宅地等」の制限は受けないという有利な扱いがあります。

まとめ

投資物件に「小規模宅地等の特例」を使うことができれば、節税効果はさらに上がります。
ポイントは
・相続税の申告期限までその事業を営むこと
・相続税の申告期限まで保有すること
・「3年以内貸付宅地等」に該当しないこと

になります。

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